インタビューVOL.1 矢澤先生 – 乳酸菌と菌活について

今回インタビューさせて頂いた専門家の先生

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長

農学博士 矢澤 一良 先生 (Kazunaga Yazawa)

1972年 京都大学・工学部・工業化学科(福井三郎教授)卒業
1973年 (株)ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務
1986年 (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員)
1989年 東京大学より農学博士号を授与される
2002年 東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科 ヘルスフード科学(中島董一郎)寄附講座(客員教授)
2012年 東京海洋大学 特定事業「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト(特任教授)
2014年 早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門(研究院教授)
2019年〜 現所属

第一回目となる今回は、乳酸菌研究の第一人者である、農学博士 矢澤先生に乳酸菌について教えて頂きました。

話題の乳酸菌と「菌活」

近年、「菌活」というキーワードが話題になっており、乳酸菌も注目されています。そのことについて教えていただけますでしょうか?

矢澤先生:
乳酸菌は細菌の1つで人間の腸に多く存在しています。
腸内細菌は様々な原因でバランスが変化し、加齢もその要因の1つです。加齢によって善玉菌が減少していきます。
2025年問題という言葉があって、2025年には“団塊の世代”が後期高齢者(75歳)の年齢に達することで、医療や介護といった社会全体の問題として認識されています。

そのような問題がある中で、乳酸菌の重要性が提唱されています。
乳酸菌などの細菌を生きたまま含むもののことを「プロバイオティクス」、生菌は含まず菌の栄養源を含むもののことを「プレバイオティクス」、双方を組み合わせたものを「シンバイオティクス」と呼んでおり、これらを活用することで、2025年問題にも大きく貢献すると考えられています。

プロバイオティクス / probiotics 乳酸菌などの細菌を生きたまま含むもの

プレバイオティクス / prebiotics 生菌は含まず菌の栄養源を含むもの

シンバイオティクス / synbiotics 双方を組み合わせたもの
1995年にGibson らにより提唱された(Dietary modulation of the human colonic microbiota: introducing the concept of prebiotics. Gibson GR, Roberfroid MB (1995): J Nutr 125(6): 1401-1412.)

加齢によって善玉菌は減少するのですね。
乳酸菌には生菌・死菌があるようですが、これらの違いを教えていただけますか?

矢澤先生:
生菌はヨーグルトに代表されるもので、死菌の菌体成分の主成分は多糖体のβ-グルカンで、きのこに近いものです。腸内常在の生菌は腸内でブドウ糖や乳糖を分解して増殖します。

乳酸菌は培養にとても時間がかかり、大量の乳酸菌を培養するのは難しいです。
乳酸菌は2倍増殖していきますが、1つの菌が培養して2つになるにはおよそ30分かかります。試験管の中では、乳酸菌自体は乳酸を自分でも出してしまうので、酸性化して、ある時点から培養が止まってしまいます。

乳酸菌は生きたまま腸に届くものもありますが、胃酸や胆汁で死滅してしまう場合があります。また、あらかじめ培養した菌体を加熱処理します。この死滅した菌が死菌と呼ばれています。

死菌は、胃酸・胆汁の影響を受けずに腸までたどり着くと、腸内常在している生菌のえさになります。加工の際に加熱を行っても成分はあまり変わらず、影響がありません。

これらのことから、死菌を摂取することが重要と言えます。

加齢以外にも善玉菌が減ってしまう、原因を教えていただけますか?

矢澤先生:
ストレス、病気、飲み過ぎ、投薬や睡眠不足、栄養の偏り、運動不足などが考えられます。

特にストレスは、自律神経に影響して蠕動運動(ぜんどううんどう)を不活発にします。

生活の質が低下していると感じているときは、本来の腸内環境でないときが多いので、善玉菌を外から補うことが重要となります。

動物由来の乳酸菌と植物由来の乳酸菌の違いはどのようなものがあるのでしょうか?

矢澤先生:
乳酸菌の由来(どこから摂れたか)によって、動物性・植物性と言います。
つまりそこに定着していた微生物で、その環境が好きな微生物のことです。
動物に定着していれば動物由来、植物に定着していれば植物由来と言います。

まとめ:
 乳酸菌を活用することで、2025年問題にも大きく貢献すると考えられている
 死菌を摂取しても、腸までたどり着いて常在菌のえさになる
 腸内細菌のバランスは加齢以外の要因でも崩れるため、日常的に乳酸菌などを外から補うことが重要

矢澤先生、インタビューありがとうございました!

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